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9 Nov 2017

D-Wave社、D-Wave 2000Q量子コンピューターのアップグレードを発表

新機能は、パフォーマンスを最大150倍向上させ、ユーザーのコントロール範囲を拡大させます

バーナビー市、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州 – 2017年11月13 – 量子コンピューティング・システムとソフトウェアの世界的リーダーであるD-Wave Systems Inc.は、本日、2018年第1四半期にD-Wave 2000Q™ 量子コンピューターへの大幅なアップグレードを行うことを発表しました。 最も強力な新機能は逆アニーリング(reverse annealing)と仮想グラフ(virtual graphs)です。 これらの機能により、ユーザーは量子処理ユニット(quantum processing unit : QPU)のコントロール範囲を拡大でき、現在のD-Wave 2000Qシステムと比較して大幅な性能向上が可能になります。

「D-Wave社は、ユーザー層の拡大に伴い、現実の問題の解決に取り組むお客様に役立つ新しい機能について、直接学ぶ機会を得て来ました」と、Hyperion Research社のアール・ジョセフ(Earl Joseph)最高経営責任者(CEO)は述べ、続けて「もっと多数の強力な量子プロセッサー、量子計算に対するユーザー・コントロールの強化、ソフトウェア・ツールのリスト(個数)の増加、これらはすべて、量子コンピューティングの進歩にとって必須の事柄です。 D-Wave社は、これらすべての領域で先駆的な仕事をしています」

「この新しい機能は、D-Wave 2000Q量子コンピューターのパワーを活用する新しい方法をユーザーに提供することになり、お客様にとって大きなメリットをもたらします」と、SVPシステムズ(D-Wave)のジェレミー・ヒルトン(Jeremy Hilton)氏は述べ、さらに、「私たちは、増加するユーザー層がアプリケーション開発に活用できる量子ハードウェア、ソフトウェア、およびその他のシステム・コンポーネントの急速な進歩の提供を継続いたします」と、続けました。

逆アニーリング

逆アニーリングは、最適化や機械学習のために、また、サイバーセキュリティや医薬品発見のようなアプリケーションのために、強力なヒューリスティック検索アルゴリズムを利用するという完全に新しい方法で、ユーザーに量子コンピューター・システムをプログラムすることを可能とします。逆アニーリングを使用すると、ユーザーは、計算の検索範囲を狭めるために、解きたいと思っている問題が予測された解にそって解かれるように指定することが出来ます。予測された解とは、それまでに出ている量子計算または古典的計算の結果であってもよいし、経験から得られた推測値であっても構いません。 逆アニーリングを用いることで、D-Wave研究者は、現在のD-Wave 2000Qシステムに対して150倍のスピードアップを観察しました。(訳注:量子アニーリングが、広い景観の中から最低高度の地点を探す、というたとえ話を思い出してください。予測された解を用いてほとんど検索する必要のない範囲を始めから除いておけば、計算時間が短縮されることが分かります)

私たちは、D-Wave 2000Qシステムの逆アニーリングの可能性について非常に興奮しています。量子システムを古典的な状態で始動させ、次に量子変動をだんだんと増大させることのできる能力を使用して、量子補助並列焼戻しと呼ばれる量子強化最適化のための新しいアルゴリズムを開発しました」と、Googleのエンジニアリング・ディレクターであるハートマット・ニーブン(Hartmut Neven)は話しました。彼は量子人工知能研究所(Quantum Artificial Intelligence Laboratory)を率いています。

「逆アニーリングは、最高の古典的パフォーマンスと最高のQPUパフォーマンスを組み合わせたツールを、相乗的に解を求めることの実現のために、使用可能としています」と、ヒルトン氏は続けます。「このアプローチを使用することで、パフォーマンスは恐ろしいほどに向上しましたが、これは単なる出発点に過ぎないと考えています。私たちの多くのお客様がこの種の機能をどのように活用するかについてのアイデアをすでに発表しており、私たちは将来大きな技術突破が現れることを期待しています」

仮想グラフ

多くの最適化および機械学習アルゴリズムは、一般的にグラフ問題として記述されています。例えば、グラフ・モデルは、都市間の交通の流れや、人工ニューラル・ネットワークにおけるニューロン間の情報伝達を分析するためにしばしば使用されます。D-Wave機の仮想グラフ機能は、量子ビットのグループの相互作用をコントロールし、複雑なグラフ内のノードまたはリンクをモデル化することにより、アップグレードされた量子システムの精度を向上させます。この新機能により、従来のD-Wave 2000Qシステムと比較して、一般的な難しい最適化問題と機械学習モデルの成功率が5倍向上しました。

プログラマーが問題をD-Wave機のQPUにマッピングするのを助けるソフトウェア・ツールの開発が増え続けています。仮想グラフはこれらのツールのパフォーマンスを向上させ、現在のD-Wave 2000Qシステムで使用可能であるものよりももっと複雑な確率分布を使用して作業することを可能にします。

2000量子ビットと強力なプロセッサー・レベルの新コントロール機能を搭載したアップグレードされたD-Wave 2000Qシステムは、現システムよりも高速に問題を解くことができます。D-Wave 2000Q量子コンピューターは、自社内に設置して使用することも、D-Waveクラウド・サービス・サブスクリプションで利用することもできます。