31 Mar 2025
日本たばこ産業とD-Wave、創薬における量子コンピューティングを活用したLLM(大規模言語モデル)AI学習の概念実証で、古典コンピュータを上回る成果を達成
量子コンピュータをAI創薬の「スピード」と「質」の変革に活用し、First in Classの低分子医薬品を創出する新たな技術「量子AI創薬」を探る概念実証プロジェクト
パロアルト(カリフォルニア州)– 2025年3月31日 –量子コンピューティング・システム、ソフトウェア、およびサービスのリーダーであり、世界初の商用量子コンピュータのサプライヤーであるD-Wave Quantum Inc.(NYSE: QBTS)(D-Waveまたは当社)と、日本たばこ産業株式会社(JT)の医薬事業部は、AIと量子コンピューティング技術を創薬プロセスに活用する共同の概念実証プロジェクトを完了したことを発表しました。JTとD-Waveは、量子ハイブリッド・ワークフローを用いて大規模言語モデル(LLM)を強化し、その生成能力を向上させることにより、JTが新規かつより「医薬品らしい」分子構造を創出できるようになりました。
この研究により、古典計算法とD-Waveの量子プロセッシング・ユニット(QPU)を組み合わせたLLMハイブリッドモデルは、古典計算法のみを使用した場合と比較して、化学的に有効な分子がより多く生成できることが示されました。さらに、QPUを活用したLLMトレーニングによって生成された分子は、トレーニング・データセット内の分子や古典計算によるLLMトレーニング法を用いたモデルによって生成された分子と比較して、「薬らしさの定量化指標」がより高いことも示されました。これらは、AI の学習における大域的な最適解(エネルギが低く安定な、より良い解)へのアクセスをQPUが誘導し、それにより、より優れた化合物が「量子AI」システムによって得られたことを示しています。
このプロジェクトの目的は、画期的な低分子化合物の探索の様々なプロセスにおいて、その質とスピードを高度化することです。本概念実証では、D-Waveのアニーリング量子コンピューティング技術をJTのAI技術フレームワークに組み込み、ChatGPTと同じエンジンであるトランスフォーマー・アーキテクチャーなどのLLMモデルを学習させ、化合物の集合(空間)を探索する目的に活用しました。このアプローチにより、より広範な分子特性や化合物の活性を取り扱うことができる機械学習フレームワークの構築の実現可能性を評価できました。これは量子AI技術を医薬品探索に用いるための新たな研究のステージの始まりとなると考えられます。その結果さらに、AIと量子コンピューティング技術を組み合わせることで質とスピードの両面から低分子化合物の探索プロセスを促進できることが,このプロジェクトにより示されました。
JT医薬総合研究所の最高科学責任者(CSO)舘野賢博士は以下のように述べています。「D-Waveとの概念実証プロジェクトから得られた結果に、大いに期待を寄せています。本実験では、D-Waveのプロフェッショナル・サービスおよび製品R&Dチームのサポートにより、D-Waveのアニーリング量子コンピュータを活用して、JTのAIモデルをトレーニングしました。我々の量子ハイブリッドAIシステムは実際に、トレーニング・データを上回る「より医薬品らしい」化合物をより多く生成しました。特筆すべきは、より良い分子特性を誘導する因子をAIモデルに何ら与えることなく,この計算結果が達成された点にあります。我々の知る限り、本成果は医薬品探索におけるLLMのトレーニングにおいて、量子アニーリング・コンピューティングが古典的手法を上回ることを示した初めての研究です。この検証を通じて、現在のAIの学習でいまだ重大な課題である「大域的な最適解(エネルギが低く安定な、より良い解)を得ることが困難」である問題に対し、量子アニーリング・コンピュータを用いるアプローチが有効であることを明らかにしました。同時に本アプローチが、大規模な機械学習フレームワークの構築を促進することもまた明らかにしました。今後はD-Waveのアニーリング量子コンピュータを活用し、量子コンピューティング・ハードウェアの特性を最大限に発揮させることにより、量子AIによる新たな創薬の創出とその加速を目指して取り組んでいきます。」
「AI業界は目覚ましい進歩を遂げてきましたが、電力需要の増加とコストの増大により、計算上の課題に直面しています。」と、D-WaveのCEOであるアラン・バラッツ博士は述べています。「量子コンピューティングをAIや機械学習と統合することで、スケーラブルでエネルギー効率の高い解決策を提供し、これらの課題に対応できる可能性があります。また、AIの能力をさらに強化できるかもしれません。JTとの共同研究プロジェクトは、量子コンピューティングとAIの統合の重要な実証・検証だと考えています。両技術を組み合わせることで、より効率的で迅速、かつ省エネルギーなAIおよび機械学習ワークロードを構築できます。量子AIの可能性を探る旅は始まったばかりですが、本研究はその着実な前進であると確信しています。」
概念実証プロジェクトの後、JTの医薬事業部は「量子AI創薬」技術の開発をさらに推進し、量子コンピューティング技術を実際の分子設計に活用することを計画しています。
JT(医薬事業部) について
JTは1987年より医薬事業に進出しました。画期的なオリジナル新薬を創出し、一日も早く患者様へお届けすることを目指しています。詳細についてはhttps://www.jt.com/about/division/pharma/index.htmlをご覧ください。
D-Wave Quantum Inc.について
D-Waveは、量子コンピューティングシステム、ソフトウェア、サービスの開発および提供におけるリーダーです。当社は、世界初の商業用量子コンピュータ供給業者であり、アニーリング型とゲート型量子コンピュータの両方を製造している唯一の企業です。当社の使命は、顧客が量子技術の価値を今日実現できるよう支援することです。5,000以上のキュービットを持つAdvantage™量子コンピュータは、世界最大規模で、オンプレミスまたはクラウド経由で利用でき、99.9%の可用性と稼働時間がサポートされています。100以上の組織が、最も困難な計算課題に対してD-Waveを信頼しています。これまでに200百万以上の問題がAdvantageシステムおよびAdvantage2TMプロトタイプに提出されており、顧客は最適化問題、人工知能、研究などのユースケースに当社の技術を活用しています。量子コンピューティングの価値を今すぐ実現する方法、そして量子技術が未来の産業や社会の発展をどのように形作っていくのかについて、詳しくはこちらをご覧ください:www.dwavequantum.com
将来予想に関する記述
このプレスリリースには、1995 年米国証券民事訴訟改革法の定義による将来予想に関する記述が含まれています。これらの記述には、リスク、不確実性、その他の要因が含まれており、実際の結果がこれらの将来予想に関する記述で明示または暗示される情報と大幅に異なる可能性があり、将来の結果を示すものではありません。これらの将来予想に関する記述は、経営陣の制御が及ばないさまざまな要因を含む、多くのリスクと不確実性の影響を受けます。これには、当社の最新の年次報告書 (フォーム 10-K) のパート I の「項目 1A. リスク要因」の見出しで説明されているリスク、または四半期報告書 (フォーム 10-Q) のパート II の「項目 1A. リスク要因」の見出しで説明されている更新情報、および SEC へのその他の提出書類に記載されたリスクが含まれます。投資判断を行う際に、このプレスリリースの将来予想に関する記述に過度に依存しないでください。これらの記述は、本日現在当社が入手できる情報に基づいています。法律で義務付けられている場合を除き、当社はこの情報を更新する義務を負いません。
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