西森秀稔博士が、量子アニーリングについてWhurley氏 (*)の質問に答える (*) Whurley氏については、Wikipediaや検索エンジンに、WhurleyまたはWilliam Hurleyと入れて調べてみて下さい もし、あなたが西森秀稔氏について聞いたことが無かったならば、量子コンピューティングについても聞いたことがないに違いありません。彼の1998年の量子アニーリング理論は、それ以来、現実の機械で広範囲に研究され、テストされてきており、今日までこの分野における多くの進歩の道を切り開いています。 西森秀俊博士は、東京工業大学の教授であり、量子アニーリングの父の一人です。彼は、東京大学で博士号を取得し、カーネギーメロン大学とラトガース大学でポスドク研究を行いました。彼は、その仕事で、IBM Science Prize(1990)と仁科記念賞(2006)を受賞しています。 今年の断熱量子コンピューティング会議で西森教授に会えたのは本当に幸運でした。これまでの私の量子キャリアの中で、お会いできたことは疑いもなく最高の瞬間でした。彼は非常な頭脳明晰さに加え、自分の作り上げたものの複雑さを説明するとき、非常に忍耐強くかつ親切でした。今週、私は量子アニーリングと量子コンピューティングの現状について、彼にいくつか質問をするという幸運に恵まれました。 量子コンピューティングと古典的コンピューティングとをどのように比較したらよいでしょうか?量子コンピューターは古典的コンピューターに置き換わるのでしょうか? 古典的コンピューターは近い将来置き換えられることはありません。量子コンピューターは、古典的コンピューターにとって極めて難しいある種の問題を解決するのを助けるでしょう。トラック上を非常に速く走る高性能レーシング・カーのような量子コンピューターを考えてみましょう。人々は、買い物、通勤など、毎日の使用のために、通常そのような車を購入しません。電気自動車であれその他の車であれ従来の車は、今世紀の終わりでもまだ世界の通りを走っているでしょう。古典的および量子コンピューティング技術は、可能な限り、また、それが適合する場合には、互いに協力してそれぞれの役割を果たすことでしょう。 量子ゲート・モデル・マシンと量子アニーリング・マシンがどのように問題を解くのかについて、その違いを門外漢にも分かるように説明して下さいませんか? ゲート・モデルの量子コンピューターは、プログラマーからの非常に詳細な命令に従って1ステップずつ進みます。独創的に設計されたアルゴリズムは、このマシンを非常に速く動かすことが可能ですが、そのようなアルゴリズムの設計には極めて優れた才能が必要です。アニーリング・マシンは、外部エージェントからの詳細な命令なしに、物理学の自然法則のもとで動作します。渓谷、山、盆地、さらには、渓谷の間のトンネルなど、険しい風景を想像してみてください。雨が降った後、水は自然に渓谷や盆地を低い方へ低い方へと下っていき、時にはトンネルを通過します。これは、量子アニーリングで起こっていることと同じです。解きたい問題が「エネルギーの風景」に変換されると、マシンは量子力学の法則に従うだけで最低点を見つけます。唯一把握しておくべきことは、まずあなたの問題をエネルギーの風景に変換しなければならないということです。これは非常に困難というほどではありませんが、最善の結果を達成するためには独創性が必要です。 量子アニーリング・マシンには、どのような問題が特に相性がいいのでしょうか?ひとたび安定なユニバーサル(汎用)量子コンピューターが登場すれば量子アニーリング・マシンが問題を選ぶということは変わるでしょうか? 多くの可能性の中から最良の解(またはそれに近いもの)を特定したい場合は、量子アニーリングは良い選択です。フォルクスワーゲン社がD-Wave社と共同研究して作成したタクシー交通最適化ソリューションは素晴らしい一例です。D-Waveマシンは短い計算時間で、北京のダウンタウンから空港まで走行の数百台のタクシーの非常に効率的なルートを見つけることに成功しました。何千もの安定した量子ビットを持つゲート・モデル(ユニバーサル)量子コンピューターがもし実現すれば、量子アニーリング・マシンに取って代わるでしょう。ゲート・モデル・コンピューターはアニーリング・マシンを効率的にシミュレートすることができます。しかし、そのようなコンピューターがいつ出てくるのか、私には分かりません。 量子コンピューティングにおける最大の工学的挑戦は何でしょうか? D-Wave、Google、IBM、Intel、その他の各社とも、量子コンピューター ― ゲート・モデルと同様にアニーリング・マシンも ― に現在採用されている超伝導技術において、量子ビットを安定した状態に保つことは非常に難しいのです。異なる量子コンピューティング技術は存在しますが、量子アルゴリズムによって定義されたように量子ビットの状態を正確に制御することが困難であるため、それらはどれも開発の初期の段階です。 量子コンピューティングは、ムーアの法則の問題を解決しようと取り組むことの助けになるでしょうか? いくつかのアプリケーションについては、イエスです。 その他のアプリケーションについては、ノーです。 どちらのタイプの場合でも、量子コンピューターが、ムーアの法則から将来外れることに対するただ一つのユニークな解決法ではありません。量子コンピューティングの長所と短所を補うために、我々は他の技術を開発しなければなりません。 量子コンピューティングと相互にやり取りする高性能コンピューティングには、どのような傾向が見られますか? 量子コンピューターは単独では動作しません。それらの容量(能力)、言い換えれば、量子コンピューターが持っている量子ビットの個数は、しばらくの間非常に制限されたものになるでしょう。私たちは、量子コンピューティングと古典的コンピューティングのハイブリッド・システムを開発・実装する必要があります。データは、古典的コンピューターと量子コンピューターとの間を行き来します。古典的コンピューターで効率的に処理できるタスクに量子コンピューターを使用することは意味がありません。ハイ・パフォーマンス・コンピューティングは、量子コンピューティングとだけではなく、他のタイプの特殊なコンピューティング・モデルとでも、そのようなハイブリッド・モデルへの道を切り開いて行くでしょう。 量子コンピューティングは、人工知能、機械学習、大規模データ、クラウドなどの技術を、どのように変え、それらにどのような影響を及ぼし、あるいは、それらをどのように取り入れるのでしょうか? 機械学習のほとんどの場面は、量子アニーリングによって処理するのが適しています。その結果、量子アニール装置は、A.I.(人工知能)をトレーニングするための鍵となるツールの1つになりそうです。もちろん、いくつかのボトルネックを解決できるということが前提です。特に問題なのは現在利用可能な量子ビットの数が限られているということです。たとえ、10万量子ビットあっても、A.I.をトレーニングするためにビッグ・データをシステムに直接ロードする(読み込ませる)ことは不可能です。古典的なコンピューターと連結して量子アニール装置を動作させるハイブリッド・モデルが可能性の一つと考えられますが、他の方法も精力的に追求されるべきでしょう。 ゲート・モデル型量子コンピューターは、古典的ビッグ・データを量子フォーマットに効率的に変換できるならば、いくつかの機械学習タスクにとって非常に有用になるでしょう。いずれにせよ、A.I.の開発で古典的コンピューターの手が極めて届きにくいところを、量子コンピューターが強力に加速してくれるだろうと、私は比較的楽観的に見ています コンピューターに問題を解かせるときに、我々が現在考えている方法をどのように変化させなければならないのでしょうか? 私たちは解くべき問題を選択しなければなりません。 量子コンピューターを使用する前に、量子処理が解こうとする問題に相応しいツールであるかどうかをよく考えてみる必要があります。 これは、問題を「解く」ために欠かせないステップです。 私は、量子コンピューターでそれに相応しい問題を解くことよりも、解くべき相応しい問題を見つけることの方が、もっと困難なことであろうと思います 伝統的コンピューティングの独特な概念やモデルに慣れた人々が、これらの新しい量子コンピューターを使って作業するとき、その慣れから離れようと苦労しているのを見たことがありますか? 古典的コンピューターは、同じプログラムによって処理されたとき、同じ入力に対してつねに同じ確定出力を返してきます。 対照的に、量子コンピューターは確率的に実行されます。 出力は実行のたびに異なる場合が起こり得ます。このことは、ゲート・モデル型とアニーリング型の両方に当てはまります。これは、量子コンピューターが信頼できないという意味ではありません。 正解を得る確率が2つのうち1つである場合、そのアルゴリズムを2回実行すれば、正解を得る可能性が非常に高くなります。 量子コンピューティングに関して、最も顕著な神話や誤解の幾つかについて教えて下さい? 広く拡がっている神話は、量子コンピューターが超高速スピードであらゆる問題を解くことが出来るという神話です。あなたの任天堂のゲーム・コンソールが量子機になったり、あなたのラップトップ・パソコンがあなたの生きているうちにWindows Qになったりして動くとは思わないでほしいです。 量子コンピューターは、少なくとも現時点では、それに相応しい問題 - 問題の個数は限られていますが - に対してのみピーク性能を発揮します。 その時期は今だ、と言われています。量子コンピューティングの近い将来の可能性を損なう潜在的な課題は何でしょうか? 科学の研究はいつも間違っている可能性があります。 私たち科学者は成功よりも多くの失敗を経験するものです。 (しかし、私たちは失敗を大声で語ることはしません) 私は量子コンピューターの出現によりバラ色の未来を約束することはしたくありません。量子コンピューター - ハードウェア、ソフトウェア、基本理論 - の開発のあらゆる面で、私たちは大きな挑戦に向かい合っています。数百量子ビットを超える容量のゲート・モデル型量子コンピューターを構築することは非常に難しいことが分かってくるでしょう。量子アニーリング型では、実用上重要な問題の多くがそれほど速く解けないことが判明するかもしれません。はるかに有望な別のコンピューティング・パラダイムが突然現れることもあり得ます。私は、挑戦がもっと強烈に見えるとき、さらに勇気づけられます;それは、突破することがより大きな影響を与えるからです。 科学の中で人生を追求するために、あなたに影響を与えた仕事をした人はいましたか?今日、量子分野で働いている人で誰かあなたを揺り動かした人はいましたか? 日本から初めてのノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士です。1949年の彼の名誉のニュースは、第二次世界大戦の荒廃の後、老いも若きもすべての日本国民にとって大きな、大きな励みとなりました。 … Continue reading 量子先生 : 西森秀稔博士が 量子アニーリングについて語る
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