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量子コンピューティング

驚くべきパワーを持つ今日のスーパーコンピューターであっても、従来のシステムでは対処できない複雑な問題があります。この旅は始まって間もないですが、量子コンピューティングは、組織・機関が直面する複雑な国防、科学、技術、商業的問題を解決するポテンシャルを持っていることです。量子コンピューティングは、技術における次のフロンティアであり、世界で最も困難な挑戦的問題の幾つかに対してまったく新しいアプローチを提供します。

量子コンピューターは、高速処理を実現するために、現実の基本的構成 – すなわち、量子力学の奇妙で反直感的な世界 – を直接活用します。量子コンピューターは、従来のコンピューターがやっている情報を0または1で保存するのではなく、0 または1あるいはその両方を同時に取りうる量子ビットを使用しています。量子もつれと量子トンネル効果に沿う、この量子の重ね合わせが、多数のビットの組み合わせを同時に取り上げ処理することを量子コンピューターに可能にさせています。

D-Wave Advantage量子コンピューター

 

Advantage™量子システムは、お客様が実用で使えるハイブリッド量子アプリケーションを開発および実行できるようにする最初で唯一の量子コンピューターです。Advantageへのアクセスは、ビジネス向けに構築された量子クラウドサービスであるLeapを介して行われます。

Advantage量子コンピューターは、量子力学を活用して、離散最適化、サンプリング、機械学習、およびその他の複雑な問題を解決するための新しい方法を加速し、可能にします。Advantageは、世界で最も強力な量子コンピューターです。5,000個以上の量子ビット、(D-Wave 2000Q™と比べ)2.5倍以上の量子ビット接続、および、より大きく、より複雑な問題を実行する機能を持つ、全く新しいプロセッサアーキテクチャを備えています。

AdvantageとD-Waveのハイブリッドソルバーサービス(HSS: hybrid solver service)の強力な組み合わせを使用して、初めて、量子アプリケーションが実用で使えます。ハイブリッドソルバーサービス(HSS)はLeapクラウドサービスから利用でき、一般的な問題では最大1,000,000変数、密な問題では最大20,000変数の問題を実行できます。密であろうと疎であろうと、複雑な問題に対して優れたソリューションを提供し、多くの場合、従来のアプローチよりも優れています。

量子効果がコンピュテーションにおいて役割を果たすためには、量子処理ユニット(quantum processing unit :QPU)は極端な分離環境を必要とします。閉サイクル希釈冷凍機および遮蔽層が、外部磁場、振動、およびあらゆる形態のRF信号から隔離された絶対0度に近い温度の内部高真空環境を作り出しています。

伝統的なスーパーコンピューターが大量の電力を消費し大量の熱を発生させるのに対し、D-Wave システムが消費する電力は25kW 以下で、そのほとんどは冷却装置とフロントエンド・サーバーの作動のために使われます。

ソフトウェア

古典コンピューティングの世界が、アプリケーション開発者とユーザーとの幅広いコミュニティの構築のためにソフトウェア・エコシステムを必要としていたのと同様に、量子コンピューティングの世界も全く同じことが必要です。 D-Wave社とその顧客、新しい量子ソフトウェア会社、独立系開発業者は、D-Waveシステムの力を活用するシステム・ソフトウェア、より高レベルのツール類、そして数々のアプリケーションを開発しています。

ソフトウェア・アーキテクチャー

量子コンピューティングで問題を解くには、従来のコンピューティングのように、コンピューターとそのソフトウェアが理解できる方法で定式化する必要があります。D-WaveのOceanソフトウェア開発キットには、量子コンピューターで困難な問題を解くためのD-Wave GitHubリポジトリ(プログラム、ライブラリー等の倉庫)にあるオープン・ソースのPythonツール一式が含まれています。このソフトウェア・スタックは、任意の問題を量子ソルバーで解ける形式に変換するために必要な計算を実装してくれます。

Oceanソフトウェアが、アプリケーション計算リソースの間を取り持ちます:

  • Applications(アプリケーション) 取り扱おうとしているコンテキスト(当の「問題空間」)の中で、アプリケーション・データと明確に定義された目標を含む元の問題のこと。 たとえば、チップ製造における回路故障診断アプリケーションが、回路内の故障した論理ゲートの最小セットを割り出すことを必要とするように。
  • Mapping Methods(マッピング手法) アプリケーションのゴールとデータを量子コンピューティングに適した問題形式に変換するツール類のこと。 また、マッピング手法は、複数のソリューション・サンプルを受け取り、かつ変換して、アプリケーション・レイヤーにソリューションとして返します。 たとえば、dwave_networkxは、構造的な不均衡分析をBQM(Binary Quadratic Model)にマップするのに役立ちます。
  • Uniform Sampler API(統一サンプラーAPI) 問題を、選択したサンプラーがアクセスできる形式に表現する抽象化レイヤーのこと。
  • Samplers(サンプラー) BQMの形式で問題を受け取り、ソリューション・サンプルを返すツール類のこと。Oceanは、D-Wave QPUと古典計算リソースを使用するいくつかのサンプラーを実装しています。 Oceanツール類を使用して、D-Waveサンプラーをカスタマイズしたり、独自のサンプラーを作成したり、既存の古典サンプラーを使用したりすることができます。
  • Compute Resources(計算資源) 問題解決の処理をするハードウェアのこと。 これはD-Wave QPUかもしれませんが、ラップトップ・コンピューターのCPUかもしれません。

ユーザーはさまざまな方法でD-Waveシステムに問題を投入することが出来ますが、問題は最終的には、量子ビットの重みとカプラーの強度に対応する値の集合として表わされます。システムはこれらの値をユーザー指定の他のパラメーターと一緒に取り込み、1つのQMI(量子機械命令)(ただ1命令のみ)をQPUに送ります。 問題の解は、見つかった量子ビットの最適な構成に対応しています。 つまり、エネルギーの高低という地形の中で最も低い地点が解となります。これらの値は、ネットワークを介してユーザー・プログラムに返されます。

量子コンピューターは決定論的ではなく確率論的であるため、複数の値を返すことが出来るので、見つかった最適なソリューションだけでなく、他の非常に優れた選択肢も提供します。 ユーザーは、システムに返してほしいソリューションの個数を指定することができます。

D-Wave 2000Qシステムでは、量子計算をコントロールする重要な制御法をユーザーが使用できます:

  • Virtual graphs(仮想グラフ) 多くの最適化および機械学習アルゴリズムは、一般的にグラフ問題として説明されます。 D-Waveの仮想グラフ機能は、ノードやリンクが複雑なグラフをモデル化するために、量子ビットのグループ間の相互作用を制御できるようにすることで、それをしないときに比べシステムの精度を向上させます。 この新しい機能により、一般的に難しい最適化の問題と機械学習モデルの解を得る成功率が、初期のD-Wave 2000Qシステムの5倍に向上しました。
  • Pause and Quench(一時停止とクエンチ) D-Waveシステムの量子アニーリングの標準アプリケーションにおいて、量子ビットは事前に設定されたアニーリング・スケジュールに従ってアニーリングが進められます。 ただし、一部のタイプの研究(量子シミュレーションなど)では、デフォルトのスケジュールをきめ細かく調整することでメリットが得られる場合があります。 このような場合、一時停止またはクエンチ(急冷、つまり、突然の終了)を導入することにより、エネルギー波形の形状を変えることができます。 このレベルの制御は、アニーリング・プロセスの途中で何が起こっているかを調べるのに役立ちます。
  • Reverse annealing(逆アニーリング) この機能により、ユーザーはシステムをまったく新しい方法でプログラムでき、最適化と機械学習のための強力なヒューリスティック検索アルゴリズム、およびサイバーセキュリティや創薬などのアプリケーションにシステムを利用できるようになります。 逆アニーリングを使用することで、ユーザーは計算の検索空間を狭めるべく、予想した解に従って問題を解くようにその問題を指定できます。 逆アニーリングを使用して、D-Waveの研究者は現在のD-Wave 2000Qシステムの150倍の高速化を観測しました。
  • Anneal offsets(アニール・オフセット): 一部の量子ビットが他の量子ビットの少し前または後にアニーリングされると、特定の問題が恩恵を受けます。 アニール・オフセット機能により、ユーザーはアニール・パスを進めたり遅らせたりして、アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。 この機能を使用するアルゴリズムは、幾つかのタイプの問題で最大1000倍のパフォーマンスの改善を示しています。

プログラミング例